人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ドイツ刑法学研究ブログ

iuscrim.exblog.jp
ブログトップ
2010年 02月 10日

上田健二先生の訃報に接して

中山先生のブログで上田先生の訃報に接し、敬愛するドイツ刑法研究の大先輩を失ったことを非常に残念に思います。上田先生は、最近では残念なことにわが国の刑法学会において失われつつある法哲学と刑法をリンクさせた研究を継続されてきました。特に両分野において大きな業績を残したドイツのArthur Kaufmann教授の下に留学され、その学説を詳細に検討され、わが国の刑法、特に医事刑法の分野に応用され重要な研究を残されました。上田先生からうかがったエピソードを一つ紹介しておきます。上田先生がBonnに始めてJakobs先生を訪ねられたとき、Jakobs先生から「ミュンヘンでは誰の下で研究してしているのですか、Roxin教授ですか」と聞かれたとき、自分は刑法解釈学よりも法哲学と刑法の関係に関心があるのでKaufmann教授のところを留学先に選んだと答えたところ、Jakobs先生は上田先生を抱擁され、「あなたは私の本当意味でのKollegeだ」といって大変喜ばれ、Kaufmann説の意義などについてかなり熱心に意見を交換されたとのことです。Jakobs先生に昨年お会いしたときも上田先生のご容態を大変心配されていました。上田先生は、50歳を越えてから安楽死問題などに関する大部の研究を次々と発表されました。私もそれを見習っていきたいと思います。きっと先生のことですからJenseitsに行かれてもKaufmannやRadbruchなどの先達とビールでも飲みながら法的に自由な領域の理論やRadbruch公式の意義などを議論されているのでは思います。心より先生のご冥福をお祈りします。 川口浩一

by strafrecht_at | 2010-02-10 20:50


<< 書評      Literturbericht... >>